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大成建設が発表したCLTユニット工法は、直交集成板(CLT)を三次元的なユニットとして組み合わせる新しい木造建築システムである。従来の木造では難しかった中大規模・中高層建築を可能にしつつ、建設過程でのCO2排出を大幅に抑制する。工場での精密加工と現地組み立てのハイブリッドにより、工期短縮と品質安定を両立。木材が炭素を固定する特性と相まり、ライフサイクル全体でCarbon Negativeを実現しうる技術として、建設業界の脱炭素化の切り札と注目されている。

引用元: 木造建築の可能性を広げる「CLTユニット工法」ってなに?建設から暮らしまで、CO2排出量を減らす合理的な選択肢とは?(obayashi.co.jp)

分析・見解

工場で壁・床・天井を一体化し現場作業を7割減らす

CLTユニット工法の価値は、単なる新工法というだけでなく、建設業界が抱える構造的な課題を同時に解決しうる点にある。CLT自体は欧米で1990年代から使われてきた木材だが、ユニット工法としての進化は日本ならではの発想だ。従来のCLT施工は現場でパネルを組み立てる方式が中心で、天候に左右されたり熟練の職人が必要になったりする課題があった。これに対しユニット工法は、CLTパネルをあらかじめ立体的な空間として組み、工場の段階で壁・床・天井を一体化したモジュールに仕上げる。自動車産業やプラント建設で培われたモジュール化の発想を建築に応用したもので、現場作業の7割以上を工場内の作業へ置き換えることができる。

製造時のCO2排出を鉄骨・コンクリートの1/3〜1/5に抑える

ここで注目すべきは、単なる工場生産(プレハブ化)ではないという点だ。一般的なプレハブ建築はコスト削減と工期短縮が主な狙いだが、CLTユニット工法は環境性能を設計の中心に据えている。CLTは木材を加工する段階で炭素を固定でき、鉄骨やコンクリートに比べて製造時のCO2排出量を1/3から1/5に抑えられる。さらにユニット化によって接着剤や金物の使用量を抑えられるため、建物が生涯で排出する炭素の総量も小さくなる。試算では、集合住宅1棟で数十トン単位のCO2を実質的に固定でき、都市部の建物そのものがCO2を吸収する存在になりうる。

国交省の木材利用義務化方針が普及を後押しする

業界の動きを見ると、2024年に改正された省エネ基準や2050年のカーボンニュートラル目標が、建設業界にこの工法の普及を進めさせる圧力になっている。国土交通省は2025年度から大型の公共建築物での木材利用を事実上義務づける方針を打ち出しており、中大規模の木造建築が抱える技術面・費用面のハードルを下げる解決策として、CLTユニット工法への期待が高まっている。

国内の供給体制と防火・構造規定の整備が課題として残る

ただし課題も残っている。ひとつは国内のCLT供給体制がまだ十分ではないことだ。国内のCLT生産能力は限られており、大きな需要に対応できる供給網はようやく整いつつある段階にある。もうひとつは規制面の整理で、建築基準法上の防火規定や構造計算の基準が、中高層の木造建築には依然として高い壁になっている。これらの課題には、政府・業界・研究機関が連携した特区制度や認証制度の整備が急がれる。

もうひとつ見逃せないのが、CLTユニット工法が建設プロセスそのものを変える点だ。BIM(建物の設計・仕様を一元管理するデータ)と連携した設計から工場での加工、さらにはデジタルツイン(現実の建物を仮想空間に再現する技術)による施工管理まで、建設プロセス全体がデータをもとに動く仕組みへと変わっていく。これは建設業のデジタル化(建設DX)の具体例であり、業界の生産性を底上げする可能性を秘めている。日本の建設業界が抱える人手不足、技能継承、品質の安定といった課題に対し、CLT工法は技術面で整合性の高い答えを示している。

ビジネスへの影響

木造中大規模物件の採算性が改善し資金調達も有利になる

CLTユニット工法は不動産開発・建設企業にとって、複数の戦略的な選択肢を開くものだ。もっとも直接的な影響は、木造の中大規模物件で採算が取りやすくなることである。工期短縮による資金効率の改善と、工場生産による品質の安定が、従来の木造が抱えていたリスクを大きく減らす。特に都市部の集合住宅やホテル、オフィス案件では、鉄骨造と木造の初期費用の差が縮まり、ESG投資(環境・社会・企業統治を重視する投資)の観点からも資金を調達しやすくなるケースが増えるだろう。

環境性能の高さが物件のブランド価値を押し上げる

開発事業者の視点では、木造建築であること自体が新たな差別化要因になる。テナントや居住者の環境意識の高まりを受けて、CO2排出の少ない建築への需要は確実に伸びている。特に海外投資家やESGファンドからの評価では、CO2を実質的に固定する建物であることが強いアピール材料になる。国内でもZEH・ZEB認定やCASBEE評価(いずれも建物の省エネ・環境性能を示す認証)との相性がよく、物件価値の維持・向上につながる。

ゼネコン・工務店は現場管理から工場・物流管理へ重心を移す必要がある

ゼネコンや工務店にとっては、工法転換に伴う社内体制の見直しが重要になる。CLTユニット工法の導入は、現場での施工から工場管理・物流管理へと業務の重心を移すことを意味する。新しいサプライヤーの選定、品質管理の仕組みの再構築、BIM運用能力の強化が欠かせなくなり、これに対応できる企業とそうでない企業の差が広がっていく可能性がある。

パイロット案件・補助金活用・国産材調達という3つの実務対応

具体的な意思決定として、次の3点を提案したい。第一に、現在計画中の木造・混構造案件でCLTユニット工法への切り替えを検討することだ。パイロット案件で実績を積むことが、将来この工法を標準にする際のコストを下げる。第二に、国や自治体の補助金・支援制度を活用することだ。木材利用促進法に基づく支援策やカーボンニュートラル関連の補助金は年々充実しており、初期投資のハードルを下げられる。第三に、国内のCLTメーカーとの提携や出資を検討し、長期的な調達先を確保することだ。需要拡大が見込まれる中、安定した調達先の確保が競争力の源泉になる。加えてこの工法は地方創生とも相性がよい。国産材の利用が進めば地方の林業の活性化につながり、ESGレポートにおける社会貢献の指標としてもアピールできる。建設業と林業が連携するモデルは、これからの地域経済にとって重要なテーマになるはずだ。

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