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大林組が「CLTユニット工法」を提唱し、木造建築の新たな地平を切り拓く。CLT(Cross Laminated Timber)は板を直交させて積層した高強度の木質パネルであり、これをユニット化して工場でプレカット・プレ组装することで、現場作業の削減と品質安定化を同時に実現する手法だ。鉄骨やコンクリートと異なり、木材は生育過程でCO2を吸収・固定するため、建築物そのものが炭素貯蔵庫となる。本記事では、この技術がもたらすインパクトを、建設プロセスの変革、環境経済性の向上、そして都市景観の変容という三つのレンズから検討する。

引用元: 木造建築の可能性を広げる「CLTユニット工法」ってなに?建設から暮らしまで、CO2排出量を減らす合理的な選択肢とは?(obayashi.co.jp)

分析・見解

工期短縮と省人化で人手不足の構造問題に応える

日本の建設業界は、熟練工の技術継承の難しさと、働ける世代の人口減少という構造的な課題を長年抱えてきた。国土交通省の建設労働需給調査によれば、今後10年間で建設技術者の約3割が定年退職を迎える。若手の入職者は増加傾向にあるものの、退職者数には追いついていない。CLTユニット工法は、こうした人手不足を技術の側面から和らげる可能性を持つ。

工場であらかじめ木材パネルをユニット化し、現場ではボルト接合を中心とした乾いた工法(湿式のコンクリート工事を伴わない工法)で組み上げる。これにより現場作業は大幅に減る。大林組の試算では、在来の鉄骨造と比べて施工期間を約40%短縮でき、現場の作業員数も約30%減らせるという。これは単なる効率化にとどまらない。建設業界の働き方改革を支える土台にもなりうる。高所作業や重い部材の取り扱いといった危険な作業が減ることは、安全面でも大きな意味を持つ。

建物を炭素の貯蔵庫として評価する新しい発想

環境負荷の低減という文脈で木造建築が語られるとき、これまでは「コンクリートや鉄骨を使わない分、CO2排出が抑えられる」という削減型の議論が中心だった。しかし近年、国際的な脱炭素の会計ルールは「貯蔵型」の考え方へと移りつつある。建物自体を炭素の貯蔵庫とみなし、そこに固定されたCO2の量を資産価値として評価する動きが広がっているのだ。

CLTユニット工法で建てた中層・高層の木造建築物は、数十年にわたって大気中のCO2を固定し続ける。欧州ではすでに、建物の炭素貯蔵量を算定・公表する枠組みが整いつつあり、不動産の価値と環境の価値を合わせて評価する流れが現実味を帯びてきた。日本でも日本木材学会や林野庁を中心に同様の議論が活発になっており、将来的には炭素クレジットとして取引されたり、不動産の評価額に上乗せされたりする可能性は十分にある。

国産木材の需要喚起と自由なデザインを両立

CLTユニット工法の中心素材であるCLTパネルは、国内の生産体制がまだ整いきっていない。国内のCLT工場は数が限られ、多くを海外からの輸入に頼っているのが実情だ。しかし、この工法が広がれば木造建築市場が拡大し、国産木材の需要を喚起することにもつながる。特に地方の素材生産地、山林組合や製材所、集成材メーカーにとっては新たな価値を生む機会となる。

CLTユニット工法は設計の自由度が高いことも見逃せない。耐火性能を確保したCLTは、大きな屋根空間や自由な立面デザインを可能にする。従来の木造建築が抱いていた「技術的な制約が多い」というイメージを覆すものであり、建築家やデベロッパーにとって魅力的な選択肢になる。実際、欧州では木造の高層オフィスビルや複合施設が次々と完成しており、木の温かみと新しさを兼ね備えた街並みが生まれつつある。

法改正とESGの追い風で日本にも普及の余地

オランダやノルウェー、カナダなどの先進事例と比べると、日本の木造中高層建築はまだ発展の途上にある。しかし、2024年の建築基準法改正により大規模木造建築への規制が緩和され、耐火構造の木造建築物として認められる要件も明確になった。さらにSDGsやESG経営への要請が企業への圧力を強める中、脱炭素に向けた建設投資は単なるコストではなく、企業価値を高める戦略的な手段として位置づけられつつある。

CLTユニット工法は、建築技術の進化にとどまらない。人材不足の解消、炭素貯蔵という資産の創出、地域経済の活性化、都市景観の刷新。これらが重なり合うところにこそ、この工法の真の価値があると考えられる。

ビジネスへの影響

工期短縮による資金繰り改善とESG融資の追い風

まず、CLTユニット工法は投資回収の考え方の見直しを迫る。建設費そのものは鉄骨造に比べてやや割高になるケースが多い。しかし施工期間が短くなることで利息負担が軽くなり、早く完成することで収益が生まれ始める時期も前倒しできる。これはIRR(内部収益率、投資でどれだけ利益が出るかを示す指標)の改善に大きく寄与する。特に中低層の商業施設やホテル、オフィスビルでは、運用開始前の資金の持ち出しを抑えられるため、資金繰りの面でも合理的な選択肢となる。

次に、ESG投資家やグリーンファイナンス(環境に配慮した事業への融資)への対応策としても有効だ。TCFDやISSBといった気候関連の情報開示を求める国際的な枠組みへの対応が進む中、自社の不動産が固定しているCO2の量を開示できることは、投資家からの信頼獲得に直結する。特に銀行からグリーンローンを借りる際には、環境への適合性を示せることが金利優遇の条件になることが多く、CLT木造建築物は資金調達コストの低減にもつながる。

木材特有の設計知識と安定供給網の構築が課題に

設計事務所やゼネコンにとって、CLTユニット工法の技術習得は競争優位になりうる。ただし習得には、木材が方向によって性質が変わる性質(異方性)や、湿気による変形への理解が欠かせない。従来の鉄骨設計の延長では対応できない部分だ。構造計算では、接合部が時間とともにゆっくり変形していく現象(クリープ)や、長期間荷重をかけたときの変形の予測が重要になる。木材特有の粘り気のある変形の性質を正しく評価できる人材の育成と確保が急務となる。

CLTパネルの調達網づくりも戦略的な課題だ。国内のCLTメーカーと長期的な協力関係を築き、安定した品質と供給、コストの低下を両立させる必要がある。海外からの輸入に頼る場合でも、為替の変動や物流コストの変動リスクをおさえるための契約の工夫が求められる。

公共施設への導入で地域の木材産業と雇用を後押し

地方自治体にとっては、学校や公民館、庁舎といった公共施設をCLTユニット工法で建て替え・新築することが、地域の木材産業の振興と脱炭素目標の達成を同時に実現する有効な手段となる。特に林業や製材業が基幹産業となっている地域では、地元産木材をCLTに加工する施設の整備に補助・助成制度を設けることで、地域内でお金と雇用が循環する効果が期待できる。

耐火性能の実績蓄積が保険料の適正化につながる

木造建築の耐火性能の評価や、長期的な耐久性に対する保険のリスク評価の見直しも重要だ。CLTユニット工法は、パネルの表面にできる炭化した層が耐火性能を確保する仕組みで、従来の木造と比べて火災のリスクは低い。しかし保険業界のリスク評価の仕組みが、こうした技術の進化に追いついていない場合がある。CLTユニット工法の実績データを積み重ね、保険業界に技術的な説明を重ねることが、保険料の適正化と資金調達の円滑化につながる。

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