CLT REPORT BLOG
CLTユニット工法が変える木造建築と脱炭素経営の実務
ニュースの概要
大林組が紹介したCLTユニット工法は、木材を直交させて積層したCLTを建物の主要部材に用い、複数の部材や設備を工場で組み立ててから現場へ運ぶ考え方です。木造化による炭素貯蔵だけでなく、施工の標準化、現場作業の圧縮、品質の安定を同時に狙える点に特徴があります。建設業では人手不足と資材価格の上昇が続くため、単に木を使う技術ではなく、設計、製造、輸送、施工、使用後の解体までを一つの仕組みとして見直す選択肢として意味を持ちます。
引用元: 木造建築の可能性を広げる「CLTユニット工法」ってなに?建設から暮らしまで、CO2排出量を減らす合理的な選択肢とは?(obayashi.co.jp)
分析・見解
現場施工中心から工場生産中心へ工法の本質が転換
CLTユニット工法の本質は、木造建築を「現場で造るもの」から「工場で生産し、現場で接続するもの」へ近づける点にあります。従来の木造は、現場での加工や職人の経験に品質が左右されやすく、天候による遅延も起きます。これに対し、ユニット化すれば、壁、床、天井、配管、断熱材などを一定の手順で組み込み、検査を工場内で進められます。現場での作業時間が短くなるほど、足場、仮設電力、揚重機の稼働、作業員の移動に伴う負荷も抑えやすくなります。
木材を使えばそのまま環境性能が高まるわけではない
ただし、木材を使えば自動的に環境性能が高まるわけではありません。森林の成長量を上回らない調達、合法性の確認、製造工場までの輸送距離、接着剤や金物の使用量、解体後の再利用可能性を一つずつ確認する必要があります。特に大型部材を遠距離輸送すれば、工場生産の効率が輸送時の排出で相殺される場合があります。環境評価では、建設時の排出だけでなく、運用時の空調負荷、改修のしやすさ、建物の寿命まで含めたライフサイクル(=建物が建てられてから解体されるまでの一生分)で比べることが重要です。
軽量で高い剛性という利点と、水分管理など設計上の課題
技術面での強みは、CLTが軽量でありながら面材として高い剛性を持つことです。鉄筋コンクリート造と比べて基礎や揚重の条件を軽くできる可能性があり、既存市街地や狭い敷地での施工に適する場面があります。一方、耐火性能、防音、湿気、接合部の耐震性は、用途と規模に応じた設計が不可欠です。木材は水分管理を誤ると劣化リスクが高まるため、外皮の納まり、雨仕舞い、換気、点検経路を初期設計に組み込まなければなりません。ユニットの標準化も万能ではなく、規格から外れる窓配置や設備仕様が増えると、特注化によってコスト優位性が薄れます。
工事費だけでなく総費用と部材の来歴管理で競争力が決まる
比較の軸を工事費だけに置くと、鉄骨造や鉄筋コンクリート造より高く見える案件もあります。しかし、工期短縮による賃料収入の前倒し、現場管理費の減少、近隣対策の簡素化、将来の部材交換のしやすさまで加えれば、総費用の差は変わります。例えば、宿泊施設、社員寮、学校、医療・福祉施設のように間取りが反復する建物では、ユニット化の効果を発揮しやすい一方、複雑な形状の文化施設では標準化の利点が限定されます。独自の視点で言えば、CLTユニット工法は木造化の技術というより、建物を「更新可能な部品の集合」に変える生産方式です。
今後は、二酸化炭素排出量の算定を設計者だけに任せず、部材の製造番号、樹種、調達地域、交換履歴を記録する仕組みが競争力になります。部材を分解して別の建物に転用できれば、廃棄を減らし、木材の価値を長く保てます。国や自治体の木材利用促進策、建築確認や防火規制の運用、地域の製造拠点の整備も普及を左右します。最終的な勝者は、木を使ったことを宣伝する企業ではなく、設計から解体までの排出量と費用を数字で比較し、用途に合う場合だけ採用できる企業です。
ビジネスへの影響
反復する部屋をどこまでユニット化できるか見極める
意思決定者が最初に行うべきなのは、建物全体を一括して木造化するかどうかではなく、反復する部屋や階層をどこまでユニット化できるかを分解することです。社員寮、賃貸住宅、ホテル、仮設校舎などは、同じ寸法の居室を繰り返すため、設計費と製造工程を標準化しやすい領域です。反対に、店舗ごとに異なる設備や大きな吹き抜けが必要な施設では、自由度を優先した方が総費用を抑えられる場合があります。
発注前の製造能力・納期確認と初期設計での関係者調整が鍵
発注前には、木材価格だけでなく、CLTの製造能力、納期、輸送ルート、クレーン設置場所、保管条件を確認します。部材が予定日に届かなければ、現場の省力化は成立しません。また、設計初期に施工会社、製造者、設備業者を交えて、接合部、配管の通し方、将来の交換範囲を決めることが重要です。後から従来工法の仕様を持ち込むと、穴あけや補強が増え、工期と費用の利点を失います。
総費用での比較と、導入後の点検体制づくりが継続力を生む
投資評価では、工事費に加えて、工期短縮による稼働開始の前倒し、現場の人員削減、廃材処分費、近隣対応費、炭素排出量を同じ表で比較すると判断しやすくなります。調達先については、森林認証の有無だけでなく、産地、乾燥工程、接着剤、端材の利用方法まで確認すべきです。導入後は、温湿度の記録と定期点検を運用計画に組み込み、木造特有の劣化リスクを見える化します。環境配慮を広報で終わらせず、調達、設計、施工、保全の評価指標に落とし込める企業ほど、CLTユニット工法を継続的な競争力へ変えやすくなります。