ニュースの概要

ライフデザイン・カバヤが、CLTハイブリッド構法を用いた3階建て戸建て住宅「CLT MASTERS SEKI」の販売を始めました。従来のシリーズを多層住宅向けに展開することで、土地価格が高く、建築面積を確保しにくい都市部の需要を取り込む狙いです。CLTは木材を直交させて積層したパネルで、壁だけでなく床や屋根にも使えるため、木造住宅の階数拡大と構造の安定化に寄与します。今回の発売は、木造住宅が郊外の低層住宅だけでなく、都市の限られた土地を有効活用する選択肢へ広がる動きを示しています。

引用元: ライフデザイン・カバヤ、3階建て戸建て住宅「CLT MASTERS SEKI」を発売(PR TIMES)

分析・見解

3階建て化で延べ床面積を稼ぐ、都市敷地の収益戦略

今回の商品化で重要なのは、CLT(=板を交差させて貼り合わせた木質パネル)を環境配慮の象徴として見せるだけでなく、都市住宅の収益計算に組み込もうとしている点です。都市部では、同じ敷地でも2階建てから3階建てに変えることで、延べ床面積を確保しやすくなります。

たとえば敷地が約30坪前後の場合、建ぺい率や容積率、斜線制限の範囲内で上階を活用できれば、1階を駐車場や水回り、2階を共用空間、3階を寝室に分けるといった計画が現実的になります。土地を広げられない顧客にとって、床面積を縦方向へ増やすことは、立地を変えずに住み心地を高める手段になります。

CLTハイブリッド構法は部分最適、剛性と施工性の配分がカギ

CLTハイブリッド構法の技術的な意味は、建物のすべてをCLTで作ることではありません。一般的な木造軸組や金物、基礎、断熱部材などと組み合わせ、パネルの強さと施工のしやすさを必要な部分に配分することで、材料費と設計の自由度のバランスを取れます。

3階建てでは、階ごとの荷重、地震時に建物にかかる横向きの力、開口部の配置、重い設備の位置が2階建てよりも厳しく問われます。CLTを床や壁に用いれば構造計画に一体感を持たせやすい一方、搬入経路やクレーンを置く場所が限られる都市部では、パネルの寸法と施工の順番を事前に検討しておくことが欠かせません。

競合は鉄筋コンクリートだけでない、木造軸組や規格住宅とも競争

見落とせないのは、都市木造の競争相手が鉄筋コンクリートだけではないことです。木造軸組の3階建て、重量鉄骨、狭小地向けの規格住宅も、価格や工期、間取りの柔軟性を巡って競合します。CLTが選ばれるには、木の質感や炭素を蓄える量だけでなく、上棟までの期間短縮、現場の職人不足への対応、断熱性能、将来の間取り変更といった複数の価値を一つの提案にまとめる必要があります。

工場で加工したパネルを現場で組み立てる割合を高めれば、職人の経験差による出来栄えのばらつきを抑えられる可能性があります。ただし専用設備や輸送費が増えれば、低層の一般住宅より割高になることもあります。

本当の試金石は建物性能でなく「都市の物流」との相性

独自の視点を挙げるなら、3階建てCLT住宅の本当の試金石は、建物単体の性能ではなく「都市の物流」との相性です。敷地前面の道路の幅や電線、近隣建物、作業できる時間帯の制限が、設計の良し悪しと同じくらい採算を左右します。今後は、標準プランの販売数だけでなく、敷地調査から構造設計、搬入、施工までを一体で管理できる仕組みが競争力になります。

さらに、木材の産地や使用量を見える化し、建築後の修繕計画や解体時の分別方法まで示せれば、脱炭素を重視する企業や金融機関との接点も広がります。都市木造は、単なる木造化ではなく、設計、製造、物流、金融を束ねる事業モデルへ進む段階に入っています。

ビジネスへの影響

住宅会社に問われる初回提案のスピードと精度

住宅会社にとって、3階建てCLT商品の投入は、都市部の土地仕入れと商品企画を見直すきっかけになります。まず確認すべきは、狭小地の案件を受けたときに、標準化された構造計算、法規の確認、搬入計画をどれだけ早く提示できるかです。

営業担当が土地情報を受け取った段階で、前面道路の幅、電線の位置、隣地との距離、重機を置く場所、用途地域、建ぺい率と容積率を確認できれば、最初の提案の精度が上がります。

パネル調達と標準化がコスト・利益を左右する

調達面では、CLTパネルの供給能力、納期、木材の含水率管理、輸送距離を複数の候補先で比較する必要があります。受注してから材料を手配するだけでは、繁忙期の納期変動が利益を圧迫します。

年間の販売目標を立てる際も、戸数だけでなく、パネルの使用量、工場の加工枠、現場でパネルを吊り上げる日数まで分解して管理することが重要です。階段や浴室、設備シャフト、外壁の納まりなど標準化できる部分を増やせば、設計変更によるやり直しを抑えられます。

訴求だけでなく販売後のデータ蓄積が次の商品力に

顧客への訴求では、木の温かさや環境性能だけでなく、限られた土地で居住面積を確保できること、上下階で用途を分けやすいこと、将来の在宅勤務や二世帯利用に対応しやすいことを示すべきです。一方で、3階建て特有の階段の負担、冷暖房計画、家具の搬入、将来の修繕費も説明し、過度な期待を生まない姿勢が信頼につながります。

企業側は販売開始をゴールとせず、完成後の光熱費や施工時間、補修の内容、顧客満足度を蓄積し、次の商品改良や金融機関向けの性能説明に活用する体制を整える必要があります。

関連記事