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三菱地所は、東京・有楽町駅前の旧有楽町ビルと新有楽町ビルの跡地で、新施設「YURAKUCHO PARK」の新築工事を9月1日に始める。計画の大きな特徴は、国産スギ材によるCLTを約480立方メートル使う点だ。CLTは木の板を繊維方向が交差するように重ねた厚いパネルで、一般には壁や床に使われる。今回は柱や梁に近い使い方にも広げる。防火地域で木材を見せる大規模建築に挑み、解体後の部材移設まで想定する点も、従来の一度建てて壊す開発とは異なる。

引用元: 三菱地所、有楽町でCLT活用の「YURAKUCHO PARK」着工へ(topics.smt.docomo.ne.jp)

分析・見解

壁材から柱と梁へ、CLTの使い方が広がる

CLTは、ひき板を直角方向に重ねて接着した大判の木質パネルだ。寸法のばらつきが少なく、工場で加工して現場で組み立てやすい。一方で、従来の都市木造では壁や床として使われる例が中心だった。YURAKUCHO PARKは、これを柱や梁のような線材に近い部位へ展開する。木材を面で使う発想から、建物の骨組み全体に組み込む発想へ進む点に技術的な意味がある。

柱や梁に使う場合は、接合部の強度、荷重が集中する部分の耐久性、火災時の燃え方を細かく確認する必要がある。木材は表面が炭化すると内部を守る性質を持つが、部材の形や接合金物によって性能は変わる。今回の実績は、今後の設計基準や確認申請で参照される実例になり得る。

防火地域で木材を見せる設計が市場を変える

都心の駅前は、防火地域に指定されているうえ、敷地価格と賃料への要求も高い。そのため、木造を採用しても、耐火被覆で木を隠す設計になりやすい。今回の計画は、100平方メートルを超えるCLTあらわし建築を実現することで、木の質感を利用者に見せながら法令上の安全性を確保する方向を示す。

これは単なる内装の話ではない。木が見える空間は、オフィスや商業施設の印象づくりに直結する。鉄やコンクリートとの差別化が難しい都心の再開発で、素材そのものを施設の価値に変えられるからだ。ただし、木材の露出量が増えるほど、火災時の検証、煙の制御、維持管理の記録が重要になる。見た目を優先して後から対策するのではなく、設計初期から一体で扱うことが条件になる。

解体後の移設が建物の寿命を延ばす

今回の計画で最も先進的なのは、解体後の移設を前提にしている点だ。通常の建築は、完成時の用途と敷地に最適化される。そのため、解体時には部材が廃棄物になりやすい。対して移設を考えるなら、部材の寸法、接合方法、取り外し順序、再利用時の検査方法まで設計段階で決める必要がある。

この考え方は、建物を固定資産ではなく、再配置できる部材の集合として見るものだ。駅前の再開発では、将来の交通計画や地域の使われ方が変わる可能性がある。短い更新周期に合わせて壊すのではなく、別の場所へ移す選択肢があれば、資材の廃棄と新規調達を抑えられる。ただし、再利用を実現するには部材台帳、接着剤や金物の情報、含水率などを長期保存する仕組みが欠かせない。

国産スギの採用は供給網の実力を測る試金石

約480立方メートルというCLTの使用量は、都市部の象徴的な建物で国産材をまとまって使う規模だ。国産スギの利用が増えれば、森林整備や製材所の稼働を支える効果が期待できる。一方、木材は産地ごとに品質や乾燥状態が異なり、必要な時期に必要な量をそろえるには早期発注が必要だ。大型建築で採用を増やすには、設計者、製材所、加工会社、施工会社を早い段階からつなぐ体制が要る。

今後の焦点は、この計画が単発の広告塔で終わるか、標準的な選択肢になるかである。成功の条件は、木材使用量だけでなく、工期、施工精度、維持費、移設時の再利用率を公表することだ。環境価値を印象ではなく数値で示せれば、金融機関やテナントも木造を比較しやすくなる。

ビジネスへの影響

発注方式を変えれば木造化の失敗を減らせる

不動産会社がCLTを採用する際、基本設計が固まってから木材会社を探す従来方式では、納期と価格が合わない恐れがある。国産スギの調達量、乾燥期間、工場の加工能力を先に確認し、設計と調達を並行させることが重要だ。特に柱や梁として使う場合は、接合部の仕様が全体の費用と工期を左右する。企画段階で施工会社と木材加工会社を交え、鉄骨案との比較を同じ条件で行うべきだ。

企業の担当者は、材料費だけでなく、現場での組み立て日数、揚重機の使用時間、耐火対策、完成後の点検費を合算して判断する必要がある。工場加工には初期費用がかかるが、現場作業を減らせれば、都心で高額になりやすい人件費や近隣対応費を抑えられる場合がある。

再利用できる設計情報を契約と運用に組み込む

循環型建築を実務に落とすには、「将来再利用する」という方針だけでは足りない。部材ごとの寸法、材種、製造日、接着剤、接合金物、補修履歴を記録し、所有者が変わっても追跡できる仕組みが必要だ。解体時に傷を付けず外せるか、移設先で現在の耐震・防火基準を満たせるかも、契約前に確認しておく必要がある。

テナントや投資家に対しては、国産材の使用量だけでなく、炭素固定量の算定方法、木材の交換時期、再利用の条件を明示すると説明力が高まる。将来の移設が実現しなくても、解体材を別用途へ回せる設計にしておけば、環境面のリスクを下げられる。YURAKUCHO PARKは、木造化を建物の見た目から、調達、維持、解体まで含む事業設計へ広げる契機になる。

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