CLT REPORT BLOG
米国初のダグラスファー製CLTが認証試験へ 西海岸の木造建築が変わる
ニュースの概要
米国オレゴン州にある大規模なCLT(直交集成板=木の板を縦横交互に貼り合わせた厚い構造用パネル)の工場で、地域産のダグラスファーを使った初めてのパネルが生産されました。このパネルは、米国の建築基準で使うために必要な認証試験へ進んでいます。工場は年間最大900万平方フィートの生産能力を持つ計画で、米国西海岸や太平洋岸地域へのCLT供給が広がると見込まれています。地元の木材を地元で加工し、大きなパネルにして出荷できれば、輸送距離の短縮や地域材の活用、木造建築の供給網の強化につながります。米国では2026年半ば時点で、着工済みや完成済みの中大規模木造プロジェクトも着実に増えています。
引用元: 米国オレゴン州のCLT工場が初のダグラスファー製パネルを生産、認証試験へ(Wood Central)
分析・見解
試作に成功しても、認証が通るまでは売れない
今回のニュースの核心は、パネルができたことそのものより、認証試験に進んだことにある。CLTは建物の柱や床、壁といった構造部分に使う。だから、強度や火に対する性能が基準を満たすと公的に確認されなければ、設計者は安心して図面に載せられない。
米国では、CLTの製品規格は樹種ごとに性能の裏付けを求める考え方が強い。ダグラスファーは西海岸の主力樹種で、硬さと強さに優れる。一方で、これまで北米のCLTは、トウヒ類などの樹種を中心に認証が進んできた。ダグラスファーが加わることは、材料の選択肢が広がるという意味で大きい。
西海岸の森と工場が近いことの意味
オレゴン州は、ダグラスファーの産地として知られる。原木を長距離で運び、別の地域で加工してから、再び建設現場へ運ぶ流れは、費用も二酸化炭素も余計にかかる。森、製材所、パネル工場、建設現場が数百キロの範囲に収まれば、この無駄は減る。
CLTは大きく重い。パネル1枚の寸法が長さ10メートル超になることもあり、トラックの積載効率が価格を左右する。つまり、工場の立地は技術と同じくらい競争力を決める。西海岸に大型工場ができる意義は、ここにある。
年間900万平方フィートという数字をどう見るか
900万平方フィートは、約84万平方メートルにあたる。延べ床面積1万平方メートルの中層ビルなら、床や壁の量で単純計算して数十棟分に相当する規模感である。ただし、これは最大能力の計画値であり、実際の稼働率は注文の量しだいだ。
欧州では、オーストリアやドイツの工場群が長年にわたり需要を育ててきた。北米は後発だが、土地が広く、森林資源が豊富という強みがある。問題は需要側だ。工場が先にできても、設計者や施工会社が慣れていなければ注文は増えない。工場の能力と市場の成熟、この二つの歩みを合わせられるかが勝負になる。
見落とされがちな視点は、乾燥と品質のばらつき
ダグラスファーは樹脂が多く、乾燥のしかたや接着の相性に気を使う樹種である。木は生き物なので、同じ樹種でも産地や育ち方で性質が少しずつ違う。認証試験は、その幅の中でも一定の品質が出ることを確かめる作業だ。量産が始まってからのほうが、品質管理の本当の腕が問われる。
ビジネスへの影響
設計者と施工会社は、調達の選択肢が増える
木造の中高層ビルを計画する企業にとって、西海岸で作られたCLTが選べることは、納期と運搬費の見通しを立てやすくする。輸入品や遠方からの調達は、為替や海上輸送の遅れに左右されやすい。地域内で調達できれば、工程管理が楽になる。
ただし、認証が完了するまでは、設計図に正式採用しにくい。今のうちにできるのは、工場側の技術資料を集めること、設計事務所と仕様を相談すること、少量の試験採用を検討することだ。
不動産開発や投資の判断では、価格より供給の安定を見る
CLTは鉄筋コンクリートより材料単価が高く見えやすい。しかし、工期の短縮や現場の人手の削減、基礎の軽量化まで含めると、総費用が近づく例もある。判断の軸は材料費の単純比較ではなく、完成までの総合的な費用と日数に置くべきだ。
地域材の利用や、輸送距離の短さは、環境配慮を説明する材料にもなる。ESG(=環境・社会・企業統治への配慮)の報告で、数字を示しやすい点は見逃せない。
日本の企業が学べるのは、森と工場と現場をつなぐ発想
日本にも国産のスギやヒノキを使うCLT工場がある。今回の事例が教えるのは、樹種の認証を丁寧に積み上げ、近い場所で作って使うという地味な基本である。国内の木材関連企業は、自社の強みになる地域材を一つ決め、その認証と用途を絞って磨くのが現実的だ。