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アットプレスに、クロスラミネーテッドティンバー(CLT)の世界市場を2026年から2032年まで予測した調査レポートの案内が掲載された。CLTは、板を繊維の向きが直角に交わるよう何層にも貼り合わせた大判の木質パネルである。鉄やコンクリートに代わる建材として、中高層建築への採用が各地で進んでいる。今回の案内は、環境負荷の小さい建築への関心の高まりを背景に、市場が今後も広がるとの見方を示すものとみられる。ただし、実務で重要なのは予測の数字そのものより、需要を支える条件と、普及を妨げる壁のほうである。本稿ではその点を整理する。

引用元: クロスラミネーテッドティンバー市場―2026年~2032年の世界市場予測(アットプレス)

分析・見解

木を貼り合わせて大きな板にする発想が市場を広げた

CLTは、ひき板(=製材した板)を繊維の向きが直角に交わるよう重ね、接着して大判のパネルにした建材である。1990年代にオーストリアで実用化され、欧州で広まった。向きを交互にするため反りや割れが少なく、壁や床を「面」で使える。重さはコンクリートの約5分の1とされ、基礎への負担も軽い。工場で寸法どおりに切り出し、現場では組み立てるだけなので、工期も縮めやすい。

象徴的なのが、2019年にノルウェーで完成した高さ約85メートルの木造ビルだ。木造は低層という常識は、すでに崩れている。

市場の伸びを左右するのは防火規制と保険の判断

需要の追い風は脱炭素である。木は育つ間に二酸化炭素を吸い、建物になってもその炭素を抱え続ける。鉄やセメントの製造で出る排出量と比べ、建設時の負担が小さい点を評価する動きが欧州を中心に強まっている。

ただし、普及の速さを決めるのは環境価値より防火規制と保険の判断である。厚い木材は燃えると表面が炭になり、内部を守る性質があり、設計しだいで耐火性能を確保できる。それでも金融機関や保険会社が納得するまでには時間がかかる。施工中に雨でぬれたり、火災が起きたりする危険も残る。実績の積み上げが、そのまま市場の伸びの上限になる。

日本は国産材の活用と生産規模の小ささが同居する

日本では2013年にCLTのJAS規格(=農林水産省の品質基準)が定まり、2016年には建築基準法に基づく設計の告示も整った。林野庁は国産スギの新しい用途として後押しし、各地に工場ができた。しかし年間の生産量は数万立方メートル規模にとどまり、欧州の大手工場の集まりとは桁が違う。価格も鉄骨造や鉄筋コンクリート造より高くなりやすく、補助金に頼る案件が目立つ。工場の稼働率が低いと単価が下がらず、単価が高いと需要が育たないという循環も見逃せない。

大阪・関西万博の大屋根リングのように、木造の見せ場をつくる例は増えた。ただしリングは主に集成材を使った象徴的な建築であり、量を生む需要とは別物である。

予測の数字より、どの用途が伸びるかを見る

市場予測は「年平均で何%伸びる」と示す。しかし木材は産地、輸送距離、為替、住宅着工の影響で振れ幅が大きい。総額よりも、住宅、オフィス、学校、物流倉庫のどこが伸びるかを見たほうがよい。数字が大きくなるほど、前提の置き方で結果が変わる点にも注意したい。レポートの前提が公開されていない場合は、傾向の確認にとどめるのが無難だ。

私は、2032年ごろまでは「CLTだけの建物」より、鉄骨と組み合わせた混構造(=木と鉄の併用)が市場を押し上げると見る。柱と梁は鉄、床と壁はCLTにすれば、重さと工期を抑えつつ、構造の不安も減らせるからだ。

ビジネスへの影響

検討の第一歩は全面採用ではなく部分採用にある

建設会社や不動産会社が最初に試すなら、建物全体をCLTにするより、床、屋根、内装壁など一部への採用が現実的である。工場で加工した部材を運び込むため、現場の人手が少なくても組み立てられ、工期の短縮が期待できる。設計の初期段階から、木材メーカーと構造設計者を同じ席に着かせたい。図面が固まってから相談すると、パネルの寸法や接合部で手戻りが出やすい。

製造枠は限られるため、納期は半年から1年前に確認しておくのが安全である。木造に慣れた施工会社が少ない地域では、施工経験の有無も発注の条件に入れて確認するとよい。

コスト比較は工期短縮の効果まで含めて行う

材料費だけを見ると、CLTは鉄やコンクリートより高く見えることが多い。比較するなら、工期が縮むことで減る仮設費や金利、賃料収入の開始が早まる効果まで含めたい。さらに、脱炭素への貢献を示せれば、投資家や入居企業への説明材料になり、補助金の対象にもなりうる。

見積もりは複数案をとり、木材価格が大きく動いたときの条件も契約に盛り込む。保険会社や金融機関には、基本設計の段階で防火の考え方を示して相談しておくと、後半の遅れを防げる。

調査レポートの数字は供給側の動きと合わせて読む

有料の市場予測は、社内の議論のきっかけとしては役立つ。ただし投資判断に使うなら、国内工場の稼働率、原料となるスギやヒノキの供給量、輸入材の為替の影響を別途確認したい。国産中心か輸入中心かで、価格の変わり方は大きく違う。取引先となる製材・加工会社の財務や増設計画も見ておきたい。供給が細いと、計画の中心にはできない。

自社の事業計画では、強気、標準、慎重の三つの需要シナリオを置き、CLTの採用比率を段階的に見直せる形にしておくと、市場が想定より遅れても傷が浅い。

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