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韓国ソウル市城北区の集合住宅「コモンズ鍾岩」で、同国初となる木造マンションの実用化に向けた検証が進んでいる。全130戸のうち2棟の計18戸にCLT(直交集成板=木の板を縦横交互に重ねて接着した厚い板)を使う計画で、適用するのは4〜13階と4〜11階だ。CLTパネルは工場でCNC(コンピューター制御の切削機)により加工し、現場では組み立てが中心になる。着工前には実物大に近い試験棟を建て、組立の手順、耐火性能、床衝撃音を確かめている。CLTの両面には防火石こうボードを重ね、2時間の耐火性能を狙う。木造を全面に出さず、コンクリート造の建物に部分的に組み込む点が特徴である。

引用元: 韓国初のCLT木造マンション、18戸に木構造を採用へ(Chosun Ilbo)

分析・見解

全130戸のうち18戸という割り切りが現実的な理由

この計画で目を引くのは、全面木造にしなかったことだ。130戸のうち18戸に絞り、しかも2棟に分けている。これは技術的な弱気ではなく、リスクを小さく区切る賢い設計だと考える。

新しい構造方式では、設計・施工・審査・保険のすべてが初めての経験になる。全戸を木造にして不具合が出れば、被害は全体に及ぶ。18戸なら、問題が起きても影響を限定でき、データも取りやすい。韓国のように中高層木造の実績が乏しい国では、まず小さな成功例を作ることが最短の道になる。

試験棟でつぶす、耐火と音という二つの弱点

木造集合住宅の弱点は、火と音に集約される。火については、CLTの両面に防火石こうボードを重ね、2時間耐火を確保する考え方だ。木は厚ければ表面が焦げて炭の層となり、内部を守る性質がある。そこにボードを足せば、燃え始めるまでの時間を稼げる。

音はもっと厄介である。木の床は軽く、上階の足音や物を落とした音が下に響きやすい。コンクリートの重さで音を止めてきた集合住宅では、ここが居住者の不満に直結する。試験棟で床衝撃音を実測するのは、この問題を契約前に見える化する作業だ。日本でも、CLTの床の上に乾式の防音層を重ねる工夫が進んでおり、同じ方向の取り組みといえる。

工場加工と現場組立が工期の読みを変える

CLTパネルを工場でCNC加工すると、穴や切り欠きの位置が数ミリ単位でそろう。現場では切る作業が減り、クレーンで吊って固定する工程が中心になる。天候の影響を受けにくく、騒音や粉じんも減る。

一方で、設計の自由度は下がる。図面が確定する前にパネルを発注する必要があるため、後からの変更が難しい。コンクリートなら現場で多少の修正が利くが、CLTは工場で加工した時点でほぼ確定する。設計と施工の前倒しの調整が、成否を分ける。

勝負どころはパネルの供給網と法制度

韓国は国内のCLT製造基盤が日本や欧州ほど厚くない可能性がある。パネルを輸入に頼るなら、為替や輸送の事情が価格を左右する。また、高層での木造は、構造計算や防火の審査基準が整うまで、案件ごとの個別認定になりやすい。今回の18戸は、その基準づくりのための材料にもなる。成功すれば、次は戸数を増やすか、階数を上げる段階に進むだろう。

ビジネスへの影響

建築・不動産事業者が今から確認しておきたい点

中高層木造は、脱炭素の説明材料として使いやすい。コンクリートや鉄に比べ、木は炭素を蓄えるためだ。ただし、評価されるのは、数字で示せる場合に限る。製造から輸送、施工までの排出量を算定できる体制があるかどうかが、投資家や入居者への説明力を決める。

事業者は、まず自社の案件で部分採用ができないかを探るとよい。共用部、低層階、最上階の一部など、リスクが小さい箇所から始めれば、実績を積みながらコスト感をつかめる。

資材商社・加工業者にとっての商機と注意点

CLTは、パネルの加工精度と納期管理が価値の中心になる。CNC加工の設備を持つ業者は、設計段階から関わることで、受注の確度を高められる。逆に、図面確定の遅れや仕様変更が重なると、在庫や納期のリスクを抱える。

契約では、変更が可能な期限、加工後の返品条件、輸送中の保管方法を明確にしておきたい。木材は湿気に弱いため、現場での養生計画も欠かせない。

日本の事業者が学べる三つの実務的な教訓

第一に、試験棟で耐火と音を先に確かめる手順は、日本の案件でも有効だ。住民からの苦情は、完成後に直すと費用が大きく膨らむ。

第二に、小さく始めて、データを公開しながら広げる進め方である。審査機関との信頼づくりにも役立つ。

第三に、木造をコンクリート造と対立させず、組み合わせる発想だ。得意な部分に使い分ければ、コストと性能の両方を取りにいける。

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